フレンチブルのワンコそば in Japan

その時私は空を飛んだ。それは言い過ぎ :下

ようやく体裁が整うと私は歩き出した。
大きな鞄でお尻を隠してはいるものの、このまま自転車置き場に戻ってどうするというのだ。ケツは冷たく水分を含んで重い。新品の愛車に座れば瞬く間にそのサドルは泥を含むだろう。絶望。

犬は主の絶望に気付く事無く更に前へ進もうとする。悶々としながら犬に付いて行くとふと目の細かい気持ちの良さそうな芝生を見つけた。先ほどまで遊んでいたらしい犬と飼い主が遠くの方へ帰ってゆくのが見える。
非現実的な出来事が面白くなり始めている半ば自暴自棄の私は突然走り出した。考えてみれば重い犬を担いで自転車を漕ぎニコタマくんだりまで来た価値を見いだすような事は今日まだ何もしていない。ようやく辿り着いたと思えば私はひっくり返り己の尊厳を守るために不毛な戦いを続けていただけだ。

ここで我が犬を紹介しよう。アーバンな我が犬は意味もなく走ることはしない。ボールを投げてもそれを追いかけることもしない。ボールを追いかけ持ってくることにあまり意味を見いだすタイプではないらしい。犬というものはボールを投げれば喜んで追いかける、雪が降れば喜び庭駆け回ると思い込んでいた飼い主二人が、その事を理解することに多少時間がかかったことに関してはご容赦願いたい。何度もボールを投げる飼い主に対する犬の視線は臆面も見せず「主のやっている事の意味が分からない。持ってこさせるくらいならばボールを投げねば良いではないのか。」と語っていた。その度に我々はボールを自分で取りに行き、それを繰り返すことでようやく学習したのである。我々は犬に教えられた。
この愛すべき犬が走るのは、主が無駄にハイテンションを装い犬の名を大声で呼びながら彼を挑発した時だけである。一緒に走らないと走らない犬。盛り上げてやらないと走らない犬、それが我がアーバン犬である。

この日も同様であった。絶望の淵に立ちフラフラと風に靡かれるままに奈落の底へ堕ちそうになっている主が、よく分からないハイテンションで犬と共に走らなければ彼は真剣に走ることはしなかった。外野にしてみれば飼い主と犬との触れ合いにしか見えぬ通常運行平常そのものの行為も、しかし、自身に降り掛かった不幸を知る私にとっては狂気の沙汰である。狂気は私を徐々に浸食していった。
グラウンドを何往復しただろうか。私の尻は相も変わらず冷たかったが、それでもつい先ほど起きた、アーバン犬を従えアーバンな街で起きた信じ難い出来事を夫に報告するくらいの余裕は出て来ていた。

チャリでブルとニコタマまで来て多摩川の芝生を歩いていたらぬかるみに滑って泥まみれになってしまった。パンツもびしょ濡れでどうすればいいか分からない。恥ずかしいので暗くなるまで帰れない。帰りたい。i-padきた。

最後の一文はこの週末に誕生日を迎える夫への愛故付け足した。
返信は1時間後、なんとその間にモバイルmujiからのインフォメーションメールが入るというお粗末さである。

可愛いね! 〜略〜 いま◯◯◯についたけど、寒い!


国語のできる人間ならば分かると思われるが、この内容の主文は「いま◯◯◯〜以下略 寒い!」である。可愛いね!が棒読みであることは想像に固くなく、それは合間に入った略文の他人事なコメントでも分かった。i-padに至ってはノーコメントである。冷水を浴びせられたかのように我に返った私はそのまま犬を従え高島屋へと向かう。男性諸君には胸に刻んでおいてほしい。夫婦の溝、男女の溝とは些細な事で深くなるものである。

犬を抱っこするための鞄はケツのプロテクトに当てているためそのまま犬を入れる訳にはいかない。私は犬を高島屋の西館1階にあるジョーカーへ預けまずは化粧室へと向かった。

トイレの鏡で確認すると、どうやら宙を舞う瞬間、私のトレーナーもまた華麗に舞っていたらしく、トレーナーの被害は最小であった。その瞬間の様子を想像するのは胸が熱くなるが、おそらくヒップホッパーの勢いでトレーナーはめくれ上がっていたと思われる。とにかくそのおかげで私のケツはトレーナーで隠され上辺だけは普段と変わりない様子であった。

その後の話にオチはない。気を良くした私は数々の困難にも負けずCDをゲットし、子豚を抱え来た道を戻り家に無事辿り着いたのである。これでこの話はおしまい。

最後に、そこまでして手に入れたCDとは何ぞや。アジカンの新作である。これは現在フジテレビの深夜枠で放送されている森見登美彦氏原作の「四畳半神話大系」のopで、アジカンも森見氏も中村佑介氏も好きな私にとっては至宝の時間なのだが、そのおかげで今アジカンを聞くとかならず小津が頭の中で小躍りするという自体が発生している。「ドス黒い糸でボンレスハムのようにぐるぐる巻きにされて、暗い水底に沈んで行く男二匹」に後追いするかのように私もまたドス黒い糸で小津と結ばれてボゴロボゴロと息を吐きながら沈んで行く「恐るべき幻影が脳裏に浮か」ぶ気がするのはこれいかに。
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by wakka-w | 2010-05-28 23:37 | ブルち 関係ない | Comments(4)
Commented by がーこ夫 at 2010-05-31 21:36 x
おーiPad買われましたか!流石です。
Commented by meeka at 2010-05-31 21:49 x
失礼ながら上、中、下と楽しませていただきました。
ヨメさまのご様子は想像するに易いワタクシです。
東横線のホームでお尻の下あたりでデニムが「裂けた」ことがある私ですもん。
その時やはり私は犬と一緒でした。。。
腰に何かを巻いて隠し、そのまま渋谷まで行った記憶。
開き直りが一番ですね。

iPadうらやましいです。
Commented by wakka-w at 2010-06-01 10:21
>がーこ様の夫様
カッパは学生の頃から新しい機械が大好きで今回もずーっとリサーチしまくっておりました。うちのはWi-Fi版だけど、家で使うにはこれでもうええやん、って感じ。サクサク動いて便利です。でもやっぱりりんごちゃんは重い。
Commented by wakka-w at 2010-06-01 10:25
>meeka様
久々にやっちまいました。でもこんなすごい尻餅は初めてかも。もう笑うしか無いところまでいっちゃった。デニムが裂ける、ってすごい響きだ(笑)これはなんだろうか、この犬種は人にまで笑いの神様を降臨させる力があるとゆーのか。
iPad楽しいです。カッパがこーゆー新しいもの好きなんでヨメも恩恵に与ってまーす。

一番上が海水魚のライム坊や。次のお兄ちゃんも海水魚のインディ。。そんなお兄ちゃん達が居る我が家のブルち生活日記
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焚き火の炎を
見ていると
ブルを思い出し
号泣。


4点


翌日腫れた目で
目が覚める。

数時間ごとに目は覚めたが
珍しく熟睡した
テントの中だったのに。

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