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Tunisia: ジェルバ島の夕暮れ時

今なら言える。素敵な1日だったと。

サハラ砂漠からの帰路。小さな集落を回りながら空港のあるジェルバ島へ向かった。
フェリーで島に渡り3日間お世話になった運転手さんと笑顔で別れ、空港に入った。
飛行機は飛ばなかった。

翌日は朝一でボルドーへ向かう筈の私たちは途方にくれる。彼が電話をかけツアー会社と対策を練っている間、私はさっさとガイドブックを取り出しホテルを探す。
こんなに飛行機の神様に見放されたことはない、そう思った。とっても素敵な国だったけれどこんなに縁がない国もそうはない、とも思った。
もっと居てほしくて意地悪されているのだろうか。それともお守り代わりのファティマの手が故郷を離れたくないと意地を張っているのか。

とにかくホテルを探さねば。隣ではこれから陸路を使ってカルタゴまで戻る話も出ている。むろんフェリーは運航していない。島にもう一つだけある橋を渡ってならあるいは。それでも9時間はかかる。現実的な話には思えなかった。

結局島を出ることを諦め翌日朝一の飛行機でカルタゴへ戻ることに賭けた。そうすればおそらく荷物はロストするが体はボルドーに到着できる予定になる。
風が止む気配はない。今日泊まる筈だったホテルは保険も兼ねて翌日に振り替えてもらう。どうせキャンセルはできないのだ。

ツアー会社や航空会社との交渉を終えタクシーに乗り込む。砂嵐で茶色に霞む家々を眺めているうちにタクシーは細い路地に入りこんだ。周りは白壁に囲まれ人の気配はない。ホテルです、と言われなければ他より少し立派な家と思ってしまいそうな程 周辺に溶け込んだ門の前でタクシーが止まる。

私たちはこの町をとても気に入ってしまった。もともとジェルバ島はフランス人の避暑地。旅行客が賑わう海岸沿いには星を5つや4つ持つリゾートホテルもいくつかある。
古い邸宅を数軒つなげて作られたこのホテルは利便性もスパのような娯楽施設も無く、観光地からも程遠い場所にある。それでもチュニジアスタイルはそのままに、フランス人オーナーによって手を加えられ少々洗練された趣を持つホテルの中は居心地が良く、砂嵐から逃げるように門を開いた私たちはこのホテルとの出会いを手放しに喜んだ。

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そしてここいらに住む人々の慎ましくも優しい生活を垣間見るには最高の場所だった。
チェックイン後に歩いたホテルの周囲は職人の町らしく、様々な職種の小さな工房からは薄く明かりが漏れている。家具屋、モーターバイク屋、ジュエリー屋、雑貨店、食堂。。狭い範囲にたくさんの街の顔を見ることができた。

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アジア人は珍しいのか興味深くこちらの様子を見ている気配もするが、目が合うと優しい笑顔で挨拶してくれる。モーターバイク屋の軒先にシャッターを向けると主人は向いの店でそこの店主と話をしていたのにわざわざ声を掛けてくれるし、雑貨屋の店主は手を振ってくれた。
満面の笑みを向け片言の英語で話しかけてくれると一期一会と思いつつも嬉しくなる。立ち寄ったジュエリー屋では使われた金属の重さで値段が決まるらしく、昔ながらの秤でアクセサリーを量り電卓を叩いて値段を教えてくれた。聞き慣れないフランス語で思わず10倍の値段と勘違いしてしまい「お金が無いの、ごめんなさい。」と言う私たちに首を振る若い職人。最後にはコインを数枚見せて「これだけ。」と教えてくれる。
素敵な笑顔で別れを告げてくれるこの青年の笑顔は私のカメラに収まって日本にやって来た。

そうか、これは神様がくれたサプライズだ。
そう思えるようになった翌日。
朝一の飛行機はキャンセル、次もキャンセルになりとうとう首都からエアバスが飛んでくることになった。
この旅のお守りにと買い求めたファティマの手をしたキーホルダーにお礼を述べて、
あなたの伝えたい事も分かった気がする。
そんな旅の1日だった。

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by wakka-w | 2009-03-28 00:07 | 諸々旅

家族(非人間)の移ろいゆく生き様に立ち会えた事を感謝する日々。


by wakka-w
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